先に世界で活躍していた太田選手を澤田選手が追いかける形で、2シーズン前まで同じ醍醐リンクで滑っていた仲が良い二人の選手。同じ濱田コーチのもとで練習しているのに太田選手は体の柔らかさと音楽の表現に秀でた選手、澤田選手はパワフルなジャンプで注目を集める選手とまったく違うタイプの選手であることがいつも話題になっていました。その後のふたりがまったく違うスケート人生を歩み、それぞれに違った苦難を乗り越えて、こうして全日本選手権の同じグループでフリーを滑っていることを感慨深く感じました。
太田由希奈選手 ファイアーダンス
ファリャ. バレエ音楽”恋は魔術師”より「火祭りの踊り/ファイアーダンス」をフリーに選んだ太田選手。ブロック大会でこのフリーを見たときはジャンプでのミスが重なり、最後はスピードもなく、全日本まで本当に勝ちあがれるのかなと心配したほどでしたが、全日本選手権にしっかり出場しただけでなくSPが終わった段階で7位の位置でフリーを滑ることができるとわかったときは胸が熱くなりました。
フリーでは順位を下げてしまいました。転倒したジャンプは最後のトリプルトウループだけでしたが、トリプルルッツとトリプルサルコウはダウングレードされてダブルジャンプに採点されてしまったのが痛かったです。実は現地観戦したSPでトリプルサルコウがやや回転不足のように見えましたが認定されていたので、フリーのルッツも同じ基準であればダウングレードは厳しいかなと思いますが、まずは難しいトリプルルッツを試合で片足で立てたということが来シーズンに向けてジャンプの自信回復につながって欲しいですね。そして、ブロック大会で苦労していたダブルアクセルがSPとフリーの両方で決まったのは大きな進歩だと思います。
実績のある選手だけに、自分はこんな位置で滑っているスケーターじゃない、もっとできるはずなににと、ともすればあせったりくさったりするところですが、うまく足首の故障と相談しながら練習してきたという苦労が、故障前の最後の国内大会となった2004年のブロック大会、そして今シーズンのブロック大会、全日本と見ていると手に取るようにわかる気がして、冷静な目ではなかなか見ることができません。それでも、途中のバタフライシットは昔ならここから足をクロスさせたシットでレベル4が取れたのにとか、ブロック大会では最後のストレートラインはもう少し斜めに横断する感じの長いステップだったのに短くなっているなとか…来シーズンに向け、ファンとして「欲張り」になれるところまで復活してきたことが素直にうれしいです。
会場へ行くと、その場の雰囲気や選手を応援したい、自分の気持ちを何かの形で表したいと「手拍子」という形が自然とでてくるのもわかるのですが、曲によっては拍を取るのが難しくて、応援のつもりが、かえってリズムをはずしたくない選手の邪魔になる場合もあるかなと正直思います。この曲に手拍子であわせるのはかなりリズム感に自信がある人でも難しいのではないでしょうか?曲によっては盛り上がりに手拍子が重なって会場全体の一体感につながる場合があるとは思いますが、テレビで見ていて気になりました。調子はずれの手拍子がはじまったところで転倒したので余計にそう感じてしまったかもしれません。以前、アイスダンスの解説で、アイスダンスは絶対にリズムをはずすことができないので、会場から手拍子があると音が聞こえなくなってしまって困るということを聞いたことがあるのですが、太田選手はシングルの選手の中では特に音を大切にする選手なので気になったのかなと思いました。
さて、太田選手の復活物語については年末にフジテレビのすぽるとで特集を組んで紹介していました。2006年版のオフィシャル応援ブック(こちら)のインタビューで、アメリカのコロラドに滞在して、リンクに併設されたトレーニング施設でリハビリのトレーニングをしながら、アイスダンスのレッスンを受けるなどしてスケートを続けているということを知ることができましたが(ホームステイ先は先日のNHK杯で来日していたアイスダンスのギルス君のところで彼の家族との交流などについても語っています)、フジテレビの情報では、その後、現地にスケート留学している韓国の選手に帯同していた韓国のコーチの励ましがあり競技に復帰するためのトレーニングをはじめることができたのだそうです。日本では東京で樋口コーチのもと神宮のリンクで練習しているようですね。全日本のキスクラには樋口コーチが座っていらっしゃいました。2007年版のオフィシャルブックが発売されていればそのあたりの経緯を太田選手自身の言葉で知ることができたかもしれませんが、発売中止となってしまったのが残念です。
澤田亜紀選手 黒くぬれ/Paint It Black
最初にこの曲で滑ると聞いたときには、村主章枝選手の大人の世界を演じたSPの印象が強かったので、年齢も若く、見た目がさらに幼く見える澤田選手には難しいかなと思いましたが、近畿ブロックで見たときに意外に彼女の滑りとこの曲があっていてさらに滑り込めば素敵なプログラムになるのではと期待していました。ただ、その後の中国杯ではシニアのグランプリ大会デビュー戦という緊張感がぬぐえず、ジャンプの失敗などもあったりして、このプログラムの魅力を発揮するまでの滑りはできていませんでした。しかし、グランプリ2試合目のカップ・オブ・ロシアのフリーではリラックスして、大きな動きで曲の雄大さが表現できていたのでこれは調子を上げてくるのではないかと全日本での演技を楽しみにしていました。
全日本のフリーではループジャンプにミスが出てしまい、ノーミスでというわけにはいきませんでしたが、大きな転倒がないクリーンな演技を披露できて本人は満足だったのではないでしょうか。特に曲が佳境に入ったところで、スピードにのったスパイラルシークエンスからダブルアクセルを2回連続で跳ぶジャンプシークエンスまでの流れは澤田選手らしい躍動感が溢れていて素晴らしかったです。
ジュニア時代からトウジャンプとエッジジャンプに得意不得意がないタイプの選手で、ロシアカップでは綺麗なトリプルループジャンプを成功させて加点ももらっていますから決してループが苦手なジャンプではないのでしょうが、今シーズンはなぜかこのループジャンプが鬼門になってしまっています。四大陸選手権へ向けて苦手意識は練習でぜひ克服しておかなければなりません。
技術点では上位の恩田選手や村主選手を上回りましたが、イーグルポジションやイナバウアーがないせいかつなぎの部分が淡白だったり、正確なエッジワークという面ではたとえばストレートラインステップに入っているチョクトーがオープンモホークに見えてしまったりとかルッツジャンプのエッジが甘くておそらく国際大会では減点されるレベルだったりという点でまだまだシニアの選手としては点数を稼げていない部分も多く、これからシニアの試合を経験することで必要性を感じてどんどん磨かれていってこれらの問題を解消していってくれるのではないかと思います。しかし、澤田選手の一番の魅力はゴム鞠のように跳ねるジャンプにあると思いますので、先シーズンに続いて今シーズンも入れる予定だった3回転3回転のコンビネーションジャンプやジュニア時代に試合に入れていたトリプルアクセルが演技の中で見られる日を楽しみに待ちたいですね。
なにより心強いのは濱田コーチと田村コーチのタッグによるサポートがうまく機能していること。男子の神崎選手がこの全日本で素晴らしい滑りを披露して4位に食い込んだり、ジュニアでは村元選手が世界ジュニア代表に選出されたりと、今シーズン濱田=田村チームは大躍進のシーズンになっています。そして澤田選手はホームリンクの閉鎖で練習場所確保に苦労したシーズンでしたが、今年は関西大学への進学で、関西大学のリンクで思う存分練習できるので来シーズン、一番飛躍が期待できる選手ではないでしょうか。
ところで、澤田選手が使った「黒くぬれ/Paint It Black」ですが、ブロック大会で聞いたときには村主選手が使っていたのと同じバージョン(試聴はこちら)かと思っていましたが、テレビ放送を見ながら違うアレンジかなと思いました。いろいろ聞いてみるとロンドンシンフォニーオーケストラのバージョン(試聴はこちらとこちら)が近いのかなと思いましたが、いずれも廃盤でフルバージョンを聞けないので判断はできませんでした。
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以降誰も使う事がないと思っていただけに、
澤田選手の選曲を知った時は驚きましたが、
本当に若さと躍動感溢れる彼女にぴったりで、
また見たいな・・・と思わせる素敵なプログラムだな〜と思います。
テレビでも彼女のリンクについての苦労は何度か目にしました、
チラシを配ったりとか、世間には出ない苦労もいろいろあったようですね。
関大進学が決まってその心配もなくなり、
本当に良かったです。
太田選手は、本当にここに戻ってきてくれたという事だけで、
言葉が見つかりません。
復活される前は、コンビネーションジャンプの
セカンドジャンプがいつもスムーズではないイメージがあり、
これがこの人の癖なのかな・・・と思ってましたが
今季見せてもらうと全く感じませんでしたが、修正されたのでしょうか?
しかし存在感は相変わらずで、氷の上に立つだけで人をひきつける
稀有な才能の持ち主ですよね。
彼女の事はいちファンとして待っていましたので、
来期は更なる飛躍を期待しています。
音楽がまた難しい曲でしたね。2シーズンぶりの復活をかけたシーズンなのだからもう少し滑りやすい曲でもよかったのではないか、とも思いました。
12位という結果が今の由希奈さんの実力を示す数字なのかと思うと少し切ないです。でも今回の全日本の女子シングル、ひょっとすると世界選手権よりもハイレベルな争いだったかも知れないけど、やはり自分が一番心から好きなのは由希奈さんだと確信した試合でした。
こんにちは!
コメントありがとうございます。
ゆかこさんがおっしゃるようにコンビネーションの流れがよくなったかもしれませんね。ブロック大会の時には公式練習で(3−3)やってるように見えたぐらいですからね(今でもあれは3−3だったと信じてます…自信ないですが)。それにブロック大会のレポートでも書きましたがルッツジャンプのエッジを修正してきたりと、復活してきただけでなく技術的な進歩もいろいろ見られるのがたのもしいですね。
>>存在感は相変わらずで、氷の上に立つだけで人をひきつける
本当にそうなんですよ。トップ選手の中では一番小柄だと思うのですが、それでも氷の上に立つとなぜか映えるんですよ。動きのひとつひとつを絶対に見逃したくない!そう思わせる魅力がありますね。
sergeiさん
コメントありがとうございます。
「火祭りの踊り」、ポピュラーな曲ですから、ポールモーリアバージョンなんかは地方の大会に行くと滑っている選手がいたりしますが、トップ選手でなかなか使われないのは、難しさがあるからなんですね、なるほど。
ワールドはキム選手やマイズナー選手もでてきますから上位争いは日本の代表も加わって激しくなりそうですが、10位前後の争いは全日本も負けてないかもしれませんね。ユーロの女子シングルよりは確実にレベルが高い争いだと思います。
TakeOneさん
こんばんは!
コメントありがとうございます。
ビールマンスピンは以前にやっていた記憶がないので、今回の復活に新しく取り組んできた技なんではないかと思いますが、SPではうまくいきませんでしたね。彼女はレイバックスピンの後ろへの体のそらし方が独特で見所にもなってますから、新採点のシステムがちょっと…ですね。それはコーエン選手も同じなんですよね。もっと彼女の美しいレイバックスピンを見ていたいと思うのにビールマンへの準備がはじまってしまう…もったいないです。レイバックスピンのレベル2とレベル3とでは基礎点は0.6しか違わないのですが、スピンでのGOEの加点はトリプルジャンプと違ってジャッジがだした点数の50パーセント、つまりもし加点を1点もらっても0.5点しか加点されない…のとを考え合わせてどういう戦略でいくかということになりますね。あとトリノオリンピック以後特に顕著だと思うのですが、ステップやスピンで高難度をそろえることがTESの点数にも影響してきていると思います。荒川静香さんのレベル4への挑戦ではないですが、トップ選手ならレベル4をそろえなければ…というのも影響してるのかなと思います。
フリーのレイバックスピン。TakeOneさんのご指摘を受けてビデオでチェックしましたが、たしかにサイドのポジション、ぎりぎり3回転で足をつかみにいってるように見えますが、足をつかんでからも上体はサイドのポジションなので回転は問題ないのでは…と見えました。初見のときも思ったのですが、取れてないとすればポジションに入ってからの回転の加速の項目かなと。これだけは客観的な判断基準がないだけにコーラーの判断になってしまいますよね。これはGPSを通じて思ったのですが、加速して回転が速いままでスピンが終わった場合は比較的子の基準が甘くて、太田選手のようにいったん加速したのにポジションチェンジなどのために回転速度が落ちてスピンが終わる場合はこの項目が取りにくいのかな…と素人判断ですが思っていたのですがどうでしょうか?
武田選手に続いて、澤田・太田選手の解説、ありがとうございます。
太田選手に関しては、この場に帰ってきてくれた事だけで、嬉しくてスピンの細かいレベル等は、全く目に入ってなかったので、解説を読む度に、頷くばかりです。
レベルアップの為に、必要だけど、個人的になかなか美しいと思えない、仰向けのポジションですが、太田選手がやると、こんなに美しいと、見惚れてしまう・・稀有な存在ですね。
樋口豊先生と一緒に、美しいスケート道を邁進して欲しいです。
澤田選手、関大に決まってリンクの心配が無くなった分、いい方向に進んでいけるのでしょうね。
コーチ体制は、どうなるのでしょうか?
濱田先生に岳斗コーチが着いて、旧醍醐組は凄く↑印象なので、出来ればいい方向を模索してほしいのですが。。
欧州も各国内選が終了してきて、GP不参加・カロリーナのまずまずの復調や、露女子の不安!優勝ドロニワはジュニアで見た記憶無くて、でもコーチにミーシンの名前、男子優勝選手は確か以前ヤグディンがコーチしてた?ジュニアワールドチャンピオンでしたね・・違うかな、間違っていたらごめんなさい。露はお国事情とはいえ、世代交代の谷間ですね。
自分がつけてたレスの中で
「ステップやスピンで高難度をそろえることがTESの点数にも影響してきていると思います」
とありますが、TESの点数に影響するのはあたりまえでしたね、PCSの間違いです。たとえばジュベール選手のPCSなどは明らかに難度の高いものをそろえたことがSSの高得点に影響してるように思えますし、村主選手の今期のPCSの伸び悩みは特にジャンプで難度の高いものがそろっていないことが影響しているように感じましたので書きました。
ぴんくぴっぐさん
こんにちは!
コメントありがとうございます。
太田選手の上向きのキャメルのポジション、美しいですね。
全日本選手権の結果では来シーズンのGPSの派遣も厳しく、ランキングを下げてますます国際大会への復帰は厳しくなってしまいますが、いつかまた海外の試合で拍手を浴びる太田選手の姿が見たい、そんな期待につながる全日本復帰戦ではなかったかと思います。
全米やユーロもあっという間なんですよね…心してかからないと睡眠不足などで風邪やノロウィルスにやられちゃいますから気をつけましょう。
安藤選手は、やはりトリノのユニバ、欠場ですね。
一年前の雪辱をと期待していたので残念ですが、3月ワールドに向けて治療に専念してほしいですね。
代わりはは、誰なのでしょうか?
太田選手だったらと期待したのですが・・。
アジア・4CC・ユーロ・全米・全加と気になる試合が続きますね。
GPで見られなかった選手が、見れるでしょうか?
コストナー選手のHPで国内選の動画が見れました。
怪我から練習再開出来たのが、どの位か?ですが、最後に見たカルガリー・ワールドよりはいい状態ですね、SPのステップからの3回転をループからルッツにしてました、失敗してましたけど・・ルッツに自信が↑たのか、ジャンプに長けたアジア10代3人やキミーに対抗するには、必須と無理をしたのか?です、FSでは3F-3Tを決めてましたが、今年ユナ選手の見事な3F-3Tを見慣れた目には↓と後半のスタミナ不足からくる乱れや、スピンの調整不足はまだまだのようです。
後は、FSのサユリ、日本人の目から見るせいか、表現が中野選手のSP比べて正直変?に感じました、欧米のジャッジにはどう映るのでしょうか?振付はローリーなので、決して下品ではないのですが・・どうも・・。
表現も研究して滑り込んだ、素晴らしい中野選手のサユリを全日本で見たばかりからかも、しれませんが。
Alexさんは、いかがですか?
http://www.yomiuri.co.jp/sports/winter/news/20070112i503.htm
全米選手権にステファニー・ローゼンタールが出場しないのがなんとも寂しいです…。詳しい理由は不明なれど、前年8位でも地区大会に出なかったり成績がふるわないと出場できないのでしょうか。
http://www.usfigureskating.org/shell.asp?sid=37061
コメントありがとうございます。
返事をするのが遅れて申し訳ありません。
TakeOneさん
こんにちは!
今シーズンまさかここまで太田選手が復活してくるとは思っていなかったのですが、これは来シーズン本当に期待できますね。ぜひ、海外のファンにも演技が見られる場所で、復活の舞を披露できるようになって欲しいです。
ぴんくぴっぐさん
こんにちは!
中野選手のSayuri…会場で見た印象は、すごく新採点向きの選手だなって、本当に努力して採点にあわせるようにがんばってるなってのは伝わってきたのですが…よく言えばテレビ向き、悪く言ってしまうと大きな会場で見てしまうとこのプログラムはちょっとこじんまりとまとまってしまって、浅田選手安藤選手恩田選手などにくらべて迫力不足というか、観客にせまるようなオーラがなかったかなと思いました。ジャッジは近い位置から見ますからそれで十分なんでしょうが…あの日は神がかり的な演技をいくつも見てしまったので正直印象が薄かったですね。彼女は小柄な選手が多い日本の選手の中でもやっぱりとりわけ小さいですから、ただ綺麗に滑るだけではたとえば世界チャンピオンを狙うとかってのは無理なのかなと考えさせられた演技でした。
長野のK嬢さん
こんにちは!
全米8位だと翌年はシード権もあると記憶していたのですが、彼女は大学1年目は学業に集中したいということで、スケートはオフにしたようです。梅田さんのブログでも国際大会で活躍するレベルの選手を除けば、大学へ入ったところでシリアスな競技からは引退する選手がアメリカでは多いそうですので、ローゼンタル選手ももしかしたらこのままフェードアウトかもしれませんね。1年あいちゃうと完全にまた地区大会からやり直しですし。