2012年01月30日

1976年「Diana Ross」ダイアナ・ロス デラックスバージョンで再発売

レコード制作、映画出演、コンサート、結婚、出産、充実イヤーズのヒット作
 ダイアナ・ロスが1976年にリリースしたその名も「Diana Ross」がモータウンのクラッシックカタログを再発売しているHip-OのMotownセレクト[official site]から来月、未発表バージョンなどを収録した2枚組のデラックス版で再発売されます。1970年のソロ第1弾も「Diana Ross」というセルフタイトルが付けられていましたので、混乱を避けるためか、日本では「愛の流れに」という邦題がつけられていました。

 シュープリームスから独立し1970年のソロデビュー以来、「Ain't No Mountain High Enough」「Touch Me In The Morning」といった大ヒットにも恵まれ、またモータウン版バーブラ・ストライサンドを目指すべくテレビスペシャルでホストを務め、主演映画が制作されそのどれも大当たり、私生活でも結婚、出産を経験して彼女のキャリアのいくつかあるピークの一つを迎えようとしていた70年代中期とあって、「マホガニーのテーマ」「ラブ・ハングオーバー」という2曲の全米ナンバー1ヒットが収録されたこのアルバムはビルボードで第5位まで上昇するヒットを記録しています。

 大変美しいアルバムカバーを飾るダイアナのポートレートですが、あのマイルス・デイビスの名作「Tutu」のアルバムカバー[こちら]は確実にこれ参考にしたのではないでしょうか?


 
 アルバム収録曲
「Theme from Mahogany (Do You Know Where You're Going To)」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 日本では「マホガニーのテーマ」として親しまれているマイケル・マッサーとジェリー・ゴッフィンのペンによるバラード。この曲をフェイバリットに挙げるファンは少なくありませんし、ダイアナのコンサートではこの曲から「Ain't No Moutain High Enough」へと続くシークエンスが毎回ハイライトになりますね[YouTube]。ダイアナの第2弾主演映画の主題歌として制作され全米ナンバー1となりアカデミー賞主題歌賞にもノミネートされました。残念ながら映画は第1弾の「ビリー・ホリデー物語/Lady Sings The Blues」ほどの大ヒットにはなりませんでしたが、黒人女性の主演映画が珍しかった時代にさらにまだまだ白人の特権的な職業とみなされていたファッションデザイナーやファッションモデルの役を演じるというのは当時としては衝撃的な大事件、数々の壁を打ち破りブラックイズビューティフルを先頭に立って体現させていたのがまさにダイアナ・ロスであり彼女を後押ししていたベリー・ゴディーJr.でした。

「I Thought It Took a Little Time (But Today I Fell in Love)」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 日本では「愛の流れに」とアルバムタイトルと同じ邦題がついていましたでしょうか。「マホガニーのテーマ」と同じ路線のマイケル・マッサーとパム・ソウヤーのペンによるバラード。70年代のソウルグルーブも巧みに取り入れられたなかなかの佳曲で「マホガニーのテーマ」に続いてシングルリリースされキャッシュボックス誌ではTop40入りするなど大ヒットの兆しが見られましたが後述する事情でリリース後1ヶ月もたたない間に次のシングルが切られてしまったためプロモーションが打ち切られたという悲劇のナンバー。この点で私はThe 5th Dimension憎しなんですよ(笑)。ブラックミュージック評論家の泉山真奈美氏がこの曲をダイアナのベストと挙げていたのが印象に残っています。後にステイシー・ラティソウがカバーしていましたI'm Not the Same Girl - Stacy Lattisaw

「Love Hangover」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 ダイアナ・ロスが初めて取り組んだディスコナンバー。レコーディングされた当初はモータウンもダイアナもディスコミュージックをどこか軽んじていた節が見られ、シングル化の予定が無かったようですが、アルバムリリース後、「I Thought It Took a Little Time (But Today I Fell in Love)」を1976年2月20日にシングルカットすると、The 5th Dimensionがダイアナの「Love Hangover」をカバーしてリリースするという情報をつかみ、慌てて3月16日に異例の短いローテーションでシングルカットを強行し、結果全米No.1を獲得、40年近く経った今でもディスコアンセムとして愛され、世界中のDJのネタとして使われ続けているのは皆様もご存じの所。The 5th Dimensionバージョン[YouTube]は本家バージョンに押され最高位80位と惨敗しております。シングルバージョンはアルバムバージョンに比べて後半のアップテンポの部分に焦点を当てた構成になっています。今回の再発売ではアルバムバージョン、シングルバージョンの両方が収録されています。
 1975年にドナ・サマーが「Love To Love You Baby/愛の誘惑」で衝撃のデビューを果たし、いよいよディスコミュージックがメインストリームでメジャーアーティストを巻き込んでいく先駆けとなったのが「Love Hangover」だったのではないかと思います。

「Kiss Me Now」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 ベリーの姉グウェン・ゴーディーがソングライトに参加したナンバー。「ビリー・ホリデー物語」の中で歌われてもおかしくないような洒落たナンバーでサッチモ風のスキャットにも挑戦しています。ダイアナと同年代のソウル系女性シンガーは白人ビッグバンドの添え物的イメージがあった時代の音楽を嫌ってか、この当時、こういうスタイルのナンバーをレコーディングをしていないので、ダイアナ・ロスならではですね。「白人に媚びている...」と叩かれたりするころでもあるのでしょうか?

「One Love in My Lifetime」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 アルバムから4枚目のシングルとしてカットされたナンバー。「マホガニーのテーマ」「Love Hangover」と立て続けの大ヒットに乗じて1976年の7月にダイアナにとってソロでは初めてのベストアルバム「Diana Ross' Greatest Hits」がリリースされており、そのプロモーションの一環としてのシングル化だったと思われます。「Love Hangover」タイプのディスコナンバーがアルバムには他になかったので次のシングルとして苦肉の策としてアップテンポで華やかな物というチョイスだったのかな?ギターなどどことなくデビュー当時のジャクソン5を彷彿させます。日本ではフリーソウルブームの時に再評価されていました。この曲もアルバムとシングルではミックスが違いますが今回の再発盤には両方が収録されます。

「Ain't Nothin' But a Maybe」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 ダイアナにとってはお馴染みアッシュフォード&シンプソンのペンによるナンバーをダイアナ自身がプロデュース。けだるいムードの中にアッシュフォード&シンプソンのナンバーらしいバックコーラスとの力強いコール&レスポンスもあり、シングルカットすれば十分ヒットするポテンシャルがあったのではと思います。アッシュフォード&シンプソンのアルバム「I Wanna Be Selfish」で発表され、先にダイアナの当時の旦那様がマネージャーを務めていたチャカ・カーンが在籍中のルーファスがレコーディングしている[YouTube]ので旦那様の推薦があってのレコーディングだったのかもしれません。

「After You」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 個人的にはアルバムからのベストカットはこの「After You」だったのでは?と思います。映画「マホガニー物語」のためにマイケル・マッサーが書き下ろしたインストゥルメンタルにロン・ミラーが詞を加筆して完成させたナンバーですが、「マホガニーのテーマ」を超える美しいメロディーとトーチソング的な詞の世界観に聞く都度メロメロになってしまいます。今回の再発売をきっかけに多くの方に聞いていただけることを期待しております。

「Smile」
[YouTube]Diana Ross - ダイアナ・ロス
 1936年の映画「モダン・タイムス」で披露されたチャップリン自身の作曲したお馴染み「Smile」。歌詞は後に書き加えられて1954年にナット・キング・コールのレコーディングで発表されています。90年代にはマイケル・ジャクソンやナタリー・コールが歌い話題となりますが、このアルバムがリリースされた時もこのスタンダードナンバーを歌うダイアナ・ロスの意図が注目されたことは想像することに難くありません。チャーリー・チャップリンは1977年にお亡くなりになっていますが、ダイアナの「Smile」が晩年の彼の耳に届くことはあったのでしょうか?

 そのほかにボーナストラックとして同時期のシングルやシングルのカップリングでありながらこのアルバム未収録の「Sorry Doesn't Always Make It Right」[YouTube]All the Great Love Songs - ダイアナ・ロス、「Together」To Love Again - ダイアナ・ロスが収録されています。両方ともマイケル・マッサープロデュースのナンバーで前者はグラディス・ナイト&ザ・ピップスが後者はステイシー・ラティソウI'm Not the Same Girl - Stacy Lattisawがカバーしています。「Sorry Doesn't Always Make It Right」は「虹の彼方に」のメロディーをモチーフに取り入れた美しいバラード。また、マイケル・マッサー自身がダイアナに提供した中で一番好きとインタビューで答えていた「To Love Again」はAlternate Versionが収録されます。
posted by Alex at 23:41| 大阪 ☔| Comment(5) | TrackBack(0) | ダイアナ・ロス | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
記事を読みながらアルバム聞こう!…と思ったら、このアルバムはipodに取り込んでませんでした(RCAのは全部落としてあるんですけど)。そんな訳で代わりに「To Love Again」聞いてます。表題曲は私も、最上級に美しいバラードだと思ってます。
携帯からなので、また改めて書き込みますね(だって書きたい事がたくさんあるんですもん)。
Posted by Suzu at 2012年01月31日 20:59
こんばんは。
自分もこれはアルバムとしては取り込めてなくていろいろばらで聞いてました。CDが届いたら久々にじっくり聞いてみたいです。
Posted by Alex at 2012年02月01日 00:52
あらためまして。

私も泉山さんと同じで、モータウン時代のベスト・ソングは(悩むけど)「I Thought It Took a Little Time」かなと思うんですよね。本当に月並みですけど、ニューヨークの夜景とかが浮かんできそうな都会的なバラードで、夜のしじまに静かに流れてくるようなダイアナの歌声が好き過ぎです。
この曲が中ヒットに終わった背景には、そんな事情があったのですね。5thディメンションが「ラブ・ハングオーバー」のカバーをしてたなんってちっとも知りませんでした。けっこうベストやアルバムも持ってるんですけど、入ってませんでしたし。
しかしこういう時のモータウンの反応は早いですよね。「カム・シー・アバウト・ミー」やちょっと違うけど「アップサイド・ダウン」なんかもそうですよね。他社の動向や世間の反応に機敏に合わせていくのは、さすがヒット製造工場の異名をとっただけあるなと思います。

「One Love in My Lifetime」は、「エデンの園」って邦題ついてませんでした?何だかこの曲で久しぶりにソウルを取り戻した…なんてどこかの本に書かれていて、なんだそれ?って思った記憶が。
「Sorry Doesn't Always Make It Right」、本当に出だしの一声は、少女のようですよね。この曲も、好きだなぁ。
Posted by Suzu at 2012年02月04日 11:35
Suzuさん
こんにちは!
久しぶりに70年代中ごろのダイアナをまとめて聞いていますが、やっぱりいいですね。彼女はどの年代も捨てがたい良い作品が多い!だからよけい90年代後半以降が惜しまれますわ。
モータウンはインディーレーベルで身軽でありながら独自の配給網を持っていたという強みがこういった機動力がでるんでしょうね。私もYouTubeではじめて5thディメンション聞きましたがほとんど同じようなアレンジなだけに先にヒットされてしまっていたら、ダイアナのバージョンは大ヒットに至らなかったかもしれませんね。
「エデンの園」たしかにそのタイトルでした!
「Sorry Doesn't Always Make It Right」もなぜヒットしなかったのか不思議なほどクオリティー高いです。
Posted by Alex at 2012年02月04日 12:19
はじめまして、mazuと申します。おちゃらけで音楽紹介のブログを書いてます。

このたび、ひょんなきっかけからダイアナ・ロスの「I thought it took a little time」について記事を書き、なぜあまりにも短いインターバルで次のシングルが出たかについての当時の疑問を思いだし、貴殿のブログを発見して納得した次第です。

そんなわけで事後承諾ですみませんが拙ブログにてリンクを貼らせて頂きました。

36年ぶりに疑問が解けて嬉しいです☆
Posted by mazu at 2012年09月07日 07:32
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