2012年01月21日

Deniece vs. Sheena

「My Cherie」覚えていますか?
 シーナ・イーストンのライブの興奮が醒めやらぬ中、シーナのゴージャスな旧譜の数々を毎日聞く日々が続いております。個人的にライブのあとよく聞いているのはジェイ・グレイドンとグレッグ・マティソンの手によるアルバム「秘密/Best Kept Secret」。当時はやりのTOTO/エアプレイ系のキャッチーな音作りが日本でも受けました。CMソングになったアップテンポの「Telefone」[YouTube]、フォスターのキーボードタッチが堪能できる「All Most Over You」[YouTube]、ペイジスの二人のコーラスが秀逸な「Don't Leave Me This Way」[YouTube](ディスコクラシックとは同名異曲ですがそちらもシーナがカバーしているからややこしい)などはなぜAORファンに再評価されないのか不思議なほど高いクオリティ。ジーン・ピットニーやダスティ・スプリングスフィールドの名唱で知られる「Just One Smile」[YouTube]でのシーナの熱いボーカルは彼女の全部のレコーディングの中でNo.1だと私は信じております。
 さて、1980年のデビューからヒット街道を突っ走ってきたシーナの最後のメジャーリリースのアルバム「My Cherie」を覚えている方はいらっしゃいますでしょうか?シーナがプロモーションで来日して「笑っていいとも」なんかに出演した記憶もあるのですが、残念ながらこのアルバムはヒットにつながらず、以後、ヒットシーンから遠ざかってしまうことになるわけですが、このアルバムも決して悪くない。収録曲を振り返ってみるとナーラダ・マイケル・ウォルデンのプロダクションの「’Till Death Do Us Part」は当時注目されていた女流ソングライター、アントニーナ・アルマトの手によるどこかマライア・キャリー風。テイラー・デインの制作チームによる「Flower In The Rain」もきらきら輝くナンバー。デビュー当時のプロデューサーであるクリストファー・ニールとのコンビを復活させた「All I Ask Of You」(「オペラ座の怪人」とは同名異曲)と「Next To You」は久々にイギリスに里帰りしてのレコーディングで軽やかなポップチューン、当時すでにスーパープロデューサーだったデヴィッド・フォスターにおそらく大金を積んで制作された「You've Learned Live Without You」はダイアン・ウォーレンの書き下ろしと言う念の入れようです。もう1曲のフォスタープロダクションのチューンがカバーになったのは製作費の都合かな。でもその「Crazy Love」の情熱的なシーナのボーカルもなかなか。バリー・マニロウも取り上げた可憐に咲くミニバラのような「Please Don't Be Scared」のスタンダード的アレンジも忘れ難い。さらに日本国内盤には日本のテレビ番組用に製作された上田知華との共作曲「愛はミラクル/The Miracle Of Love」も収録されているというバラエティーに富んだ構成。アルバムの肌触りはEMIアメリカの消滅で日本でのリリースのみとなってしまう憂き目に合うもファンの間で人気が高く、私もシーナ・イーストンのアルバムとしては一番好きな1987年の「No Sound But a Heart」に近いものがあり、リリース当時はよく聞いたものです。でも売れなかった。振り返ってみると、この辺りから自分の好みとビルボードチャートとの乖離を意識するようになり再発盤の世界へ逃げ込むようになっていったような気がします。

先行シングル「My Cherie」に?の嵐
 内容の充実ぶりに反してアルバムがこけた最大の要因は先行シングル「My Cherie」[YouTube]がマーケットからリアクションを得られなかったこと。個人的にもアルバムの中で唯一とらえどころがなく中途半端なダンスチューンが先行シングルになったのか納得がいきませんでした。新しく台頭してきたセリーヌ・ディオンやマライア・キャリーがアルバムから大きなバラードを堂々とカットして大ヒットを手にしていた時代ですから、シーナにもバラードで勝負して欲しかったですね。残念ながらシーナにはバラードでのビッグヒットが映画がらみの「For Your Eyes Only」のみでレコード会社的には信頼できず、ダンスチャートならある程度宣伝費でリアクションを買える部分も期待しての先行シングルというのは理解できなくもないところですyが…同様にアメリカのチャートで低迷していたダイアナ・ロスも日本やイギリスでバラードのビッグヒットを飛ばしながらアメリカでは何故か弱気にダンスナンバーから切ってはこけ切ってはこけしていたこともあって歯がゆさ倍増でございました。中古CD屋さんでは不本意ながら100円ワゴンセールに出されていたりするほど比較的入手しやすいですので一度お手に取っていただけましたら幸いです。

「My Cherie」の元ネタってもしかして?
 当時とても不思議で受け入れ難かったのが「My Cherie」のメロディーに対して蛇足な字余り感のある変速ビート。こないだふっと思いついたのですがこの曲の元ネタってデニース・ウィリアムスの「When Love Comes Calling」[YouTube]なんじゃないかな?「My Cherie」のサビメロと「When Love Comes Calling」の歌いだしもなんか似ているし字余り感のあるリズムの切り替わっていくきっかけなども妙に類似点が。シーナは後にデニースの「That's What Friends Are For」(「愛のハーモニー」とは同名異曲)をカバーしているのでデニース・ウィリアムス聞いていたはずだし、前述のようにアルバム「My Cherie」の目玉トラックを制作したデヴィッド・フォスターがデニースのナンバーにもかかわっていることを考え合わせると「『When Love Comes Calling』みたいな曲」とシーナ側から発注していても不思議ではないと思います。そんなに興味がなかった曲でもこうしてほかの曲と聞き比べながらいろいろ妄想を膨らますと、愛着がわいてくるから不思議。横聞きの醍醐味ですね。いつの間にか「My Cherie」「When Love Comes Calling」の2曲だけのプレイリストを作ってエンドレス再生していたりします。

「When Love Comes Calling」「My Cherie」
 ちなみに「When Love Comes Calling」が収録された同名アルバムはスティービー・ワンダーのバックコーラス出身という大看板を背負ってアース・ウィンド&ファイアー率いるカリバンプロの全面バックアップで1976年にメジャーデビューを果たしたデニース・ウィリアムスの1979年にリリースされたサードアルバム。実はセカンドアルバムの後でジョニー・マティスとデュエットで「Too Much, Too Little, Too Late」が全米No.1を獲得、その勢いでアルバム「That's What Friends Are For」(なぜか「Too Much, Too Little, Too Late」は未収録)をリリースしているので厳密には4枚目になるのかもしれません。ファーストアルバムとセカンドアルバムはモーリス・ホワイトの総指揮のもと制作されましたが、一説によると彼が忙しすぎてサードアルバムはその弟子筋にあたるデヴィッド・フォスターに任されたとか。
 今の力関係だと考えられないですけど、スタジオミュージシャンとして売れっ子だったデヴィッド・フォスターもこの79年にアース・ウィンド・ファイアーに提供した「After the Love Has Gone」でグラミー賞を獲得したことでようやく一般的に認知されるようになるかならないか、そんな頃ではなかったでしょうか?デヴィッド・フォスターにとってはメジャーレーベルですでにヒットを持つ女性シンガーのアルバムをプロデュースするのは初めて、この仕事がその後にバーブラ・ストライサンド、ナタリー・コール、ホイットニー・ヒューストン、セリーヌ・ディオンといった女性ボーカリストとの相性の良さでビッグヒットを量産するスーパープロデューサー、デヴィッド・フォスターの出発点となった作品として特に熱狂的なAORファンが多い日本ではデニース・ウィリアムスという名前を離れて抜群の知名度を誇る1枚となりました。とは言ってもレコード会社もフォスターに絶対的な信頼を寄せてなかったのか、シングルヒット狙いで数曲はレイ・パーカーJr.に委ねていたりするところに当時の状況を垣間見ることができます。
 「When Love Comes Calling」以外にはフォスター&キャロル・ベイヤー・セイガー&デニースの共作によるバラード「Why Can't We Fall in Love?」[YouTube]が圧巻。ストリングスとフォスターのピアノだけでデニースの繊細な歌声をセンシャルに盛り上げる「Touch Me Again」[YouTube]も完成度が高い。デニースを聞きなれてしまうとデニースの劣化コピーな人たちは聞けなくなるから注意が必要です。もちろんこのアルバムはデニースファンである私にとって大切な1枚ではありますが、あまりにもきっちり作りこまれ過ぎて息が詰まるというのでしょうか?デニースの自由な歌声はトム・ベルによる「My Melody」[YouTube]やデビューアルバムに収録された「Free」[YouTube]のようなおおらかさのあるナンバーのほうが生き生きと聞こえて好きではあるのです。
posted by Alex at 17:05| 大阪 | Comment(2) | TrackBack(0) | evergreen (女性ボーカル) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うーん、確かに似ているかも。でもよっぽど二曲を並べて聴くか、両曲のお馴染み度が高くないとこの発想は出てこないでしょうね。やはり、Alexさんならでは(smile)。

私も(は)もうこの頃は聴いては次聴いては次って生活をしていましたし、関心は次世代のアーティストに向かってましたから、シーナの新作!って飛びついたけど、以前のようなインパクトが感じられなくてすぐお蔵入りさせてしまいましたです。曲も思い出せるのは「マイ・シェリー」ぐらい。ゆえに新作気分でもう一度聞いてみると、今なら楽しめるかもしれないなーなんて思います。
デニースもこのアルバムは1回聞いたくらいでしょうか?併せていってみますね。
Posted by Suzu at 2012年01月22日 18:51
返信したつもりが消えてた...
Suzuさんこんばんは!
どちらもすてきなアルバムですのでぜひぜひ掘り下げてみて下さいね。
当時は働き出して間もない頃で音楽聞いてる余裕もなかなかなかったような記憶もあります。
Posted by Alex at 2012年01月24日 23:45
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