2011年03月06日

Right Rhythm The Pointer Sisters

モータウン移籍第1弾「Right Rhythm」
 「ネット上であまりレビューなども見かけることないCDで、かつ自分もあまり聞いた記憶がないもの」も無事第3弾。先日の「Serious Slammin'」の流れでポインターシスターズ再登場でございます。いろいろCD棚から候補も出してきて聞いてみたのですが、聞かなかったCDには聞かなかった理由があるわけで、それをあらためて聞こうとするとどこか無理があったりして、ポインターシスターズのアルバムはベースでは彼女たちのことが好きであるにもかかわらず、たまたまなんらかの事情で聞かなかっただけなので、今回ご紹介する「Right Rhythm」は聞いてみたらはまった。さっそくiPhoneのiPodにも登録してヘビロテで聞かなければという感じです。
 Planetの契約を引き継ぐ形で彼女たちのアルバムをリリースしてきたRCAからまさかのモータウンへ移籍、同時に長年にわたり彼女たちのレコーディングをコントロールしてきたリチャード・ペリーから離れました。まさかのモータウンというのは古くはボニー・ポインター件で両者の間に禍根を残していたことや、ポップ/ロック的なサウンドでクロスオーバー的な人気を博してきた彼女たちが今さらブラックミュージック専門レーベル?と思うところもあるからです。移籍が成立する1989年の1年前に創業者のベリー・ゴディーJr.はオーナーシップを手放して、実質的にはMCAレコード傘下の一つのレーベルとして以前のモータウンレコードとはまったく別の組織になっていたと考えればかつてのわだかまりも水に流せたのかな?そして、モータウンの社長に元MCAブラックミュージック担当のジェリー・バズビーが就任していたことが、ポインターシスターズにとって、移籍先決定の大きな要因になったかもしれません。バズビーは1984年大手MCAレコードが弱かったブラックミュージック部門の責任者となるとパティ・ラベル、ステファニー・ミルズ、グラディス・ナイトといった大物を呼び寄せ見事復活させ、シーナ・イーストンとベイビー・フェイスを引き合わせて大ヒットをもたらしたり、ジョディ・ワトリー、ニューエディション、ボビー・ブラウンの売り出しに成功するなど、一気にMCAをブラックミュージックのカテゴリーでナンバー1に押し上げた凄腕。そんな手腕にポインターシスターズも期待が大きかったに違いありません。この先は想像ですが、ビバリーヒルズコップのサントラなどでポインターシスターズとバズビーの間にはすでに何らかのコネクションはあったかもしれませんね。
 もちろん、リアルタイムで動向を注視していたわけではなく、完全に後追い。当時はポインターシスターズのCDがストックされているショップなど皆無の田舎に住んでいて、インターネットもなく彼女たちの新作がリリースされていることすら知りませんでした。2000年ごろかな、中古店めぐりをしながらめぐりあったっきり、またまた埃をかぶらせていたCDを今回再発掘いたしました。

ミネアポリス録音とLA録音の二本立て
 このアルバム、ミネアポリス録音とLA録音のナンバーで構成されていて非常にわかりやすいコンセプト。ミネアポリス録音ではジャム&ルイス、アンドレ・シモン無き後、プリンス殿下(なんか「さかなくんさん」みたいな表記になってるな)の片腕となったリーヴァイ・シーサーJr.がプロデューサーとしてサウンド作りを任されています。狙いは明確ですね。ポインターシスターズ版の「ジャネット・ジャクソン」でしょ。大ヒット作「Control」の収録曲を髣髴させるフックをもったナンバーが満載で、かつポインターシスターズのボーカル/コーラススタイルもうまく生かされていて、オープニングから「Friends' Advice (Don't Take It)」[YouTube Live/PV]「Man with the Right Rhythm」「Real Life」と楽しめます。「You Knocked the Love (Right Outta My Heart)」はプリンスの「You Got The Look」をCD/カセットのみのボーナストラック「Thank You」は同じく殿下の「Baby I'm A Star」を髣髴させるうねりがあるアッパーチューンで、特に「Thank You」は「Fire」「Jump」などのポインターシスターズの代表曲が冒頭でサンプリングで使われているだけでなく、「Jump」や「Neutron Dance」風のスーパーハイテンポになっているところにも、長年応援してきたファンにまさに感謝を伝えるような「Thank You」ソングなっていてなかなか良い仕掛けなんではないでしょうか?ライブの最後にやったら盛り上がりそう。先行シングルとなった「Friends' Advice (Don't Take It)」人気のシェップ・ペティボーンがポストプロダクションを施し、万全の態勢でヒットを狙っているわけですが、あまりシェップ・ペティボーンらしさが感じられませんね。むしろ、彼がノータッチの「Billy Said Yes」のほうがペティボーンらしいベースラインが当時はダンスフロアー受けしたんじゃないかな。ミネアポリス録音(ポインターシスターズのボーカルはロス録音かもしれませんが)の中では個人的には「Billy Said Yes」がベストですね。
 LA録音は従来のリチャード・ペリー路線の延長線上。「After You」[YouTube Live/PV]「What a Woman Wants」「Where Have You Been?」といったミッドテンポのナンバーはモータウンのハウスプロデューサー的な存在だったジェイムス・アンソニー・カーマイケルによる仕事。ジャクソン5のアレンジやコドモアーズのプロデューサーとして台頭を表し、80年代にはコモドアーズを独立しモータウンの屋台骨を支えたライオネル・リッチーの大ヒットアルバムをすべてプロデュースしています。奇をてらわない手堅いサウンドプロダクションに定評があります。どの曲もどこかで聞いたようなメロディーを持つ親しみやすいナンバーでポインターシスターズファンならするっとその世界へ入っていけますね。「What a Woman Wants」のコーラスワークなんてこれぞポインターシスターズですし、「Where Have You Been?」のようにリードボーカルが次々と変わっていくのもポインターシスターズにしかできない芸当。ジェイムス・アンソニー・カーマイケルの仕事っぷりは、ちょう90年ごろから人気プロデューサーとなるウォルター・アファナシエフとかぶりますね。
 残りの1曲はマルティ・シャノンとダニー・センベロというリチャード・ペリー時代におなじみの名前が並ぶ「Insanity」[YouTube Live]。ポップ/ロック的アプローチが全面に押し出されて、80年代の人気サントラ盤に収録されていそうなナンバー。
 10年前に「Right Rhythm」を手にした時に全く聞けなかったのは、このアルバムの骨格となるミネアポリスサウンドが当時はすでに10年経過していて古さがぬぐえなかったからだと思います。発売から20年経過した2011年になってみると、流行が一回り?といったこともないでしょうが、古さが気にならずに冷静に楽しむポイントを探しながら聞くことができます。「Insanity」が少し弱いかなと思うぐらいで全10曲、捨て曲なしで楽しめる構成。これがアナログ盤なら思い切ってミネアポリスサイドとLAサイドに曲をAB面で分けたほうが、アルバムを通して聞くには流れがとぎれなくていいかなと思う以外は、文句のつけようのない好盤なんですけど、見事に売れなかったんですね。アルバムチャートに入った記録すら残されていない。

なぜ?まさかあの女帝の影響?
 モータウンと契約した当時はジューンが「モータウンにかつての栄光を取り戻して見せるわ("We want to help [Motown] get back up where it was")」なんて強い意気込みを語っていたぐらい、この移籍第1弾には期するものがあったと思うのですが、なぜ売れなかったのでしょうか?今になって分析してみても仕方ないですが、89年にはジャネット・ジャクソンが「Rhythm Nation 1814」をリリースしていて「Control」の次のサウンドを提示しちゃった中では、流行に半歩乗り遅れてたのでしょうか?先行シングル「Friend's Advice」がR&Bチャートで最高36位というところで大ヒットに結びつかないとみるや、その路線をあきらめて次は「Insanity」をカットしてるあたりにもちぐはぐ感がぬぐえませんね。こちらはR&Bチャートで62位どまりもダンスチャートでは11位にランクされたようですが。今もBGMで流していますが、いい作品なんですけどねこのアルバム。もったいない。
 これは書きたくない情報ですけど、ポインターシスターズがモータウンと契約した1989年ってダイアナ・ロスがモータウンに復帰した年でもあるんですね。彼女の復帰第1弾アルバム「Working Overtime」をモータウンが全社を挙げてプロモーションする中で、ポインターシスターズのアルバムのプロモーションが後回しにされてたとしたらダイアナファンとして申し訳ないな(何を言ってるんでしょうね)。これがモータウンでの最初で最後のアルバムとなってしまいました。
 このシリーズ、ここまではあえて探して買わなくてもだったですが、この「Right Rhythm」は女性ポップボーカル好きなら、お求め易いお値段でセコハンが出回っているようですし、手に入れて損はないんじゃないですか?しばらく愛聴盤になりそうです。



posted by Alex at 16:56| 大阪 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | evergreen (女性ボーカル) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これもよく聞いてました!

…というのは嘘。もうこの頃は洪水のように色んなもの聞き始めてましたし、これは一聴ピンとくるものがなくて、あっという間に棚の飾りになっていってしまいました。メロディーが思い出せるのはタイトル曲ぐらいです。以前Alexさんが取り上げた「ドント・ウォーク・アウェイ」ってこれに入ってたっけ?なんて思ったり(smile)。

そんな訳で、今回の更新を頼りにもう1度聞くべく、今ipodに取り込んでおります。ちょっと新譜を聞く気分ですね。楽しん再探訪したいと思います。
Posted by Suzu at 2011年03月06日 20:51
Suzuさん
こんばんは!
Suzuさんもさすがにこれは聞かれていませんでしたか。
本当にポインターシスターズの新作を聞いている感覚で楽しめました。
曲紹介するためにYouTubeでいろいろ動画も見られてお得な気分です。
Posted by Alex at 2011年03月07日 00:51
ええ、聴いてましたとも。
私は、聴いてましたとも…。

何から何までご指摘のとおりです。
モータウンは全くマーケティングしてませんでした(その背後に女帝が介在したかどうかは知りませぬが)し、全くチャートとも無縁でした。

「Rhythm Nation 1814」の時代に「Control」をやってる。ホント、そのとおりです。
 LA録音は従来のリチャード・ペリー路線の延長線上。正しくホントにそのとおり。
前作の内容から見て、恐らく彼女達はプリンスとコンタクトを取っていただろうと思うのですが、あり付けたのがリーヴァイだったんだろうな…なんて、当時も思ったものでした。
個人的には「LA部分は全面的に無用」。前半ばっかり聴いてた記憶が…。ああ。

"Friends' Advice"のヴィデオ、かっこ良かったんだけどなぁ。
Posted by ぶらん丼 at 2011年03月07日 16:17
ぶらん丼さん
もちろん聴いていらしたでしょうね。
「Friends' Advice」のPV、YouTubeで見ましたけどちゃんと作りこまれててお金かかってますよね?私は前作よりこちらのほうが好みだなと思いました。今日も聞いてましたよ。
プリンスとコンタクトですか、残念ながらプリンスは長身美女があまりお好みじゃないですからね。仕事相手はもれなくミニモニちゃん。チャカ・カーンもよく考えたら背が低いし。
自分が好きなものが売れないときのがっかり感、お察しいたします。
Posted by Alex at 2011年03月07日 21:47
通勤の行き帰りで聞いてきましたけど、今聞くと当時の無反応がなんで?ってくらい良いじゃありませんか。ヴォーカルの勢いなんて更に増してる気がしますし。
「After You」「You Knocked The Love (Right Outta My Heart)」「Billy Said Yes」のくだりとかツボですよ。
PVもめちゃくちゃかっこいいですね。当時は見かけたこともなかったですけど…。
「Only sisters can do that」とかももう一回聞いてみましょうかね。
Posted by Suzu at 2011年03月07日 21:53
Suzuさん
こんばんは!
これは聞きなおして良かったなって、後味もいいかんじ。「Only sisters can do that」、私もその勢いで引っ張り出してきてます。まだ聞けてないけど。
Posted by Alex at 2011年03月08日 19:32
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