キム選手のジャンプの技術点
3F+3T 11.50(基礎点9.50+GOE2.50)
1Lz 0.30(基礎点0.6+GOE-0.30)
2A 4.70(基礎点3.50+GOE1.20)
合計 16.50点
浅田真央選手のジャンプの技術点
3F+3Lo<(3F+2Lo) 5.20(基礎点7.00+GOE-1.80)
3Lz 6.80(基礎点6.00+GOE0.80)
2A 4.50(基礎点3.50+GOE1.00)
合計 16.50点
なんと、今回のショートプログラムではジャンプに関する技術点は同点でした。スピン/ステップの判定で浅田選手はレイバックスピンでレベル4が取れなかった分、キム選手に分が悪かったわけですから、場合によっては技術点で浅田選手が負けていてもおかしくなかった…というのが現在の採点システムなのです。
今回このようなジャンプの採点になってしまった原因はできばえを評価するGOEにかかる係数が、ある条件下では大変バランスを欠いたものになっているのではないかという疑いが浮かび上がりました。
今回の例で説明しますと…
シングルルッツジャンプの基礎点は0.60点、シニア女子シングルのSPではステップからのトリプルジャンプが必須ですので、今回のキム選手のようにシングルになってしまうと全ジャッジが自動的にGOE出最大の-3.0をつけます。しかし、0.60-3.00=-2.40とその要素が基礎点を割り込んでマイナスされることは実際にはなく、GOEに係数が設定されていてシングルルッツの場合は-3.0は-0.3に換算されて合計は0.30点となります。
一方で、単独のトリプルフリップの基礎点は5.50点、トリプルループの基礎点は5.00点、ダブルループの基礎点は1.50点です。
コンビネーションジャンプは単純に基礎点が合計されますので3フリップ+3ループならば10.50点の高い基礎点がつきますし、例えループがダウングレードされてダブル判定になったとしても7.00点と3回転2回転のコンビネーションの中では高い基礎点があります。しかし今回の浅田選手の場合、回転不足ということで基礎点が下げられただけではなくできばえを評価されるGOEで-1.80点(7人のジャッジが-2.0、2人のジャッジが-1.0)となったため合計で5.20点しか獲得できませんでした。するとどうでしょう?後半にループをつけたために単独のトリプルフリップを跳んだよりも点数が低くなってしまっています。もし減点の理由が後半のループ部分の回転不足のみだとすると(映像的にフリップはむしろ加点がつきそうなジャンプに見えました)、この部分が基礎点を越える減点をされたことになってしまいます。コンビネーションジャンプの場合は、2つのジャンプのうち難度の高いほうのジャンプにGOEにかかる係数が縛られているのです。
参考)
GOEの7段階評価
3F-3Loの場合(3.0 2.0 1.0 0 -1.0 -2.0 -3.0)
3F-2Loの場合(3.0 2.0 1.0 0 -1.0 -2.0 -3.0)
3Loの場合(3.0 2.0 1.0 0 -1.0 -2.0 -3.0)
2Loの場合(1.5 1.0 0.5 0 -0.3 -0.6 -1.0 )
3Lzの場合(3.0 2.0 1.0 0 -1.0 -2.0 -3.0)
2Lzの場合(1.5 1.0 0.5 0 -0.3 -0.6 -1.0 )
1Lzの場合(1.0 0.6 0.3 0 -0.1 -0.2 -0.3)
言葉足らずになっているかもしれませんが、最初にトリプルジャンプを跳んだコンビネーションで後半のジャンプでダウグレードされるた場合、GOEの減点幅が不当に不利に働く採点方法になってしまっているのではないか?という疑いがあることをご理解いただけましたでしょうか?
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@niftySports@niftyフィギュアスケート特集グランプリファイナル2008 女子シングルSP終了 キム・ヨナ1位、浅田真央2位
今回のジャッジは、コーラーのエッジや回転不足の判定は、ちょっと甘め、あるいは、一貫していないと思う部分もありましたが、大体ルール通りだったんじゃないかなぁと思いました。
一体、誰が決めているんでしょうね。
浅田選手ならこれを乗り越えられる、と素人はすぐに考えてしまいますが、本人にとっては大変なこと。でも、やはり浅田選手はじめ日本人選手に、変なルールに負けるな、と期待したくなります。
この結果に対して腑に落ちない気持ちでいた一人です。
3-3に挑戦しても回転不足だったら、3-3の点からでなく3-2のジャンプの点から引かれて、結果単独ジャンプよりも点が落ちてしまうとは皮肉な話ですね。
実力に差があるならともかく同じくらいなのに見た目の印象とかけ離れた結果になってしまった理由が少しわかりました。
素人にもわかるよう採点システムの改正、それが無理であれば採点結果に対する説明があればありがたいと思いました。
いつも楽しく読ませていただいています。
ご説明、わかりやすかったです。
ありがとうございます。
確かに、減点の原因であるのがコンビネーションの2つ目のダブル(と認定された)ジャンプなのに、1つ目のトリプルジャンプの減点幅で減点されるというのはおかしいですね。
他の方のおっしゃる通り、2つ目のジャンプは飛ばなかった方がいいということになってしまうんですね!
これでは、飛ばない方が得点が上になってしまうことを防ぐためにトリプルとダブルとでGOE減点幅を変えている、ということと矛盾してしまいますね。
ダウングレードに限らず、コンビネーションの得点のつけ方は、難しいと改めて感じました。
こんなこと言っても仕方ないんですが、GOEで減点とエレメンの質を同時に評価するのは効率的でないと感じます。
GOEは0〜3で評価して、転倒は-3、DG-は2、eは-2、!は-1というようにしてくれた方が、見てるほうもジャッジもよっぽど判りやすいと思ってしまいます。
選手の皆さんは、現行のルールの中で頑張っていらっしゃるのに、こんなことを言って申し訳ありませんが、正直な感想です。
どんなに他の面でがんばっていても少しのミスとくどくどと指摘するお姑さんの面目躍如システムだなぁと。
姑のネガティブ思考にお嫁さんが切れてしまい嫁の仕事を手抜きでやるようにならないようにしてほしいなぁと切に願います。
興味深いお話をどうもありがとうございます。とても勉強になりました。
この記事を読んで、それならばSPのコンボでは、下手に第2ジャンプを跳ぶよりも、いっそ第2ジャンプをつけられなかった振りをして(?)、単独ジャンプにしてしまったほうがいいのか? …などと、私もつい考えてしまいましたが、ひとまずSPでは、さすがにそんなことはないようですね。
去年の日米対抗で、浅田選手がSPにコンボを入れなかったことを思い出し(すべてきれいな単独ジャンプでした)、動画を探して見てみたところ、解説の本田さんが「コンビネーションジャンプは必要要素なので、入っていないと減点されてしまう」と指摘しておいででした。また、プロトコルを調べてみたところ、確かに減点されていました(3Lzの6.00から-2.40の減点)。
今季の採点を見ていると、第2ジャンプに3Loを跳ぶのは本当に割が合わないなと思うし、理不尽で納得できない面も大きいですが、とにかくすべてきれいに成功すれば問題ないわけで、浅田選手もそれをめざしているのだろうから、見ているほうもあまりカッカせず、応援していきたいと改めて思いました。
こんばんは!
今回のようなことはやはり競技への信頼感を貶めてしまうような事態になりかねませんから、メディアも内容を雰囲気で伝えるのではなくわかりやすく正確に伝えてほしいのはもちろんですが…それでなくても採点競技というのはわかりにくいものですから、ISUもルールの整合性を常に追及しなければなりませんね。
progressさん
こんばんは!
ソルトレーク五輪のときにペアで採点問題が発生したために、ルールが現在のように変えられてしまったのはご存知だと思いますが…そのときにより一般の観客にわかりやすい採点システムにするのではなく、ジャッジの国籍を隠したりするなど、自分達を守るための鎧を厚くすることに手間をかけすぎて、肝心の採点方法の整合性を確認する作業がおろそかになってしまったのではないか?と思わざるを得ません。
橘さん
こんばんは!
本当に難しいですよね。
マイナスとプラスを同時にGOEに反映させるのはおっしゃるように難しいですから分離させるアイデアは里に理にかなっているように思えます。せめてSPで要素を満たさなかった場合の減点はGOEとは別に-3とか-1とかばっさりマイナスにするべきかなと。旧採点のころはそれに相当する以上に要素抜けには厳しかったですから。
TKさん
こんばんは!
新採点システムって本来は曖昧だった採点基準を詳細に設定することが目的だったはずなのに、運用してみると、採点システムを変えたのではなく、競技の本質を変えてしまったように感じてしまいます。フィギュアスケートってこんな重箱の隅をつつくことを競う競技ではなかったと思うのですが…。
NOMA-IGAさん
こんばんは!
そうなんです、SPでは要素落ちしてしまうと-3.00が自動的につきます(逆に日米対抗のとき-1とか-2をつけたジャッジはルールがわかっていらっしゃらないと思われます)。
ただ問題はセカンドジャンプでの減点がセカンドジャンプの基礎点を超えてマイナスされるという点で、結果的にファーストジャンプの基礎点以下になってしまうということで、やはり問題だと思います。これがフリーとなると・・・現実としてセカンドジャンンプがダウングレードされたためにきれいにとんだファーストジャンプの基礎点以下の点数にしかならないということがおこりうるんですね。
フィギュアスケートは大好きなんですが採点はまだまだ初心者で。。。今回のSPの得点に疑問を持っていました。こちらのブログを読み、なるほど〜と納得しました。が、ちょっとしっくりこない採点方式ですね。
コンビネーションでセカンドジャンプがDGだったときにファーストジャンプ単独の基礎点より低くなってしまうような大量失点があるということですね。セカンド3Loは回転不足にされがちなようですので、現在の採点方式では3回転2回転にする、セカンド3Tなど安全策をとったほうが確実ですよね。
回転不足つながりで、もしよろしければ初心者の私にお教えください。フリーの安藤選手の4Sですが、基礎点は10.30ですよね(間違ってたらすみません)。安藤選手はたしかに回転不足だったようですが、得点が2.90にまで下がっていてびっくりしました。明らかに3Sよりは回転していて着氷もきれいだったのに、回転不足というのはこんなに減点されてしまうのですか?
皆様 こんにちは!
浅田選手のSPの点数を見て家族がインチキだと騒ぐので、なだめるのが大変でしたよ。あまりスケートを見ない人からしたらキム選手が明らかにパンクしたのに点が同じ? なんで? となるのは仕方のないことですよね。実は私もそのひとりでした(笑)。
こちらのおかげでプロトコルを電卓片手に見る習慣がつき、前後の試合の結果と照らし合わせたり、ジャッジごとの癖を追及してみたりして、とても楽しいです(笑)。
ジャンプは回転数が多ければいいのなら、「回りすぎたジャンプ」には自動的に加点すればいいのにと馬鹿なことを考えてしまいます。
たとえば今回の安藤選手の4回転サルコー、3回転より多く回ったからGOEで+2とか。中野選手の3Aもそうしてほしい。・・・馬鹿ですね。
いろいろと納得できない矛盾が生じている中で選手もコーチも振付師も本当に大変だと思います。
文句があるならクリーンに滑れという意見もあるかもしれませんが、でも明らかにおかしいのではという箇所は早く直してほしいなあと簡単に思ってしまいます。
やはり実施して何度も採点する中であれ? と思うことが浮き彫りになるのですかね。新採点もシーズン前半戦でまだGPSくらいのところにいるのかもしれません。
次は全日本、Alex様の記事を楽しみにしています!
私も係数と減点の不思議について疑問を感じていたので、自分のブログで書こうかな、と思っていたところでした。Alexさんがとても分かりやすく丁寧に書いて下さっているので、この記事にリンクして紹介したいと思うのですが、宜しいでしょうか?ご許可頂ければ幸いです。
ルールというのは細かく作れば作るほど落とし穴があるものですが、この穴は出来れば早急に対処してほしいところですね。SPとフリーのGOEの付け方は同じにして、回転不足のマイナスはもう少し見直し、またSPの要素抜けに関しては転倒と同じで別に減点をとるといった方式が良いのでは……などと週末から素人考えしておりました。(SPでのプレッシャーは強くなりますが……。しかし、今の採点方式では大きな逆転が可能なようでいて、優勝となると、やっぱり2本とも出来るだけクリーンに滑ることが重要視されているようにも感じます。それだったらSPでの要素抜けはガツーンと下げられた方が、何かとすっきりするんじゃないかなぁ、なんて)
見た目の感想と採点が合わないのは、ルールをある程度理解しているコアなファンでさえストレスを感じますから、ルールもまた工夫してもらって、レベルアップしていってほしいですね。様々な要素や価値観が総合的に評価される面白さがフィギュアスケートの魅力でもありますから、テレビ観戦でもより分かりやすく伝わるようになって欲しいと願っています。
光さん
こんばんは!
確かに一般的にはループよりトウループのほうが難易度が低いのですが、浅田選手はジュニアのころによくトウループでプレローテーション(踏み切りのときに先に回転をはじめてしまう)を指摘されてダウングレードされた経験などもあってあまり好んで使わないというのもあるかもしれません。アルトゥニアンコーチ時代にそれはすっかり矯正されて、昨シーズンは見事に3−3を決めていましたので、本人の気持ちだけの問題かなと思いますが…。
あと、フリーでは別のところのコメントにも書きましたが、将来的には今の単独トウループがルッツに、そしてフリップのコンボをどちらが3連続になるかは別にして3フリップ3トウと3フリップ3ループになるのかな?なんて思っています。3アクセルの確率が上がってくればSPで3アクセルのコンボという選択肢もあるのかな???なんて夢見すぎでしょうか。
安藤選手の4サルコウ、素晴らしいトライでした!テレビでもなかなか明言できなくて…どうだったんだろう!とどきどきしながら見守ってしまいました。回転不足で基礎点は4.5点と半減した上に正しい着地(もしくは踏み切り)でないとして-1.6もされているんですね。空中の姿勢や流れは素晴らしかったと思うので、あれで-2をつけるジャッジにはちょっとがっかりしました。旧ルールのときも不十分な回転のトリプルより十分な回転のダブルを評価するというルールは確かにあったのですが(4回転について拡大解釈されていたかどうかは記憶があやふやで申し訳ありません)…新ルールではあまりにも惨い採点システムになっていて、今回は男子のGPF優勝者ですら4回転に挑戦すらしない(世界選手権もそうでしたっけ…)という技術の後退が目に見えてはじまっているのが残念です。
ひまわりさん
こんばんは!
確かに回転不足で減点はわかるので・・・基礎点から減点なら理にかなってると思いますが、回転しすぎで減点、3回転を2回転の基礎点にした上に減点は意味がわかりませんね。大きく流れを止めるようなミスになってるなら仕方ないですけれど。
全日本、毎年のように密度の濃い素晴らしい戦いとなり、「世界一のナショナルチャンピオンシップ」と胸を張っていえるような大会になりましたね!今年はどんなドラマが待っているのでしょうか?
jamさん
こんばんは!
お返事が遅くなってすいません。jamさんに検証していただいた上で間違いが無いと判断していただければリンクしていただいて問題ありません。
フィギュアスケートっていろいろな創造性が盛り込める競技で、それを採点するにはアバウトに見えて6点満点システムってかなりうまく機能していたんだなとあらためて思います。ご指摘のように今は全体で約7分-8分のSPを滑るような採点システムになってしまって、以前はフリーではジャンプの得意な選手はジャンプをたくさん入れたり、スピンが得意な選手はスピンを多めにいれたりとかってこともあったと記憶しているのですが、ステップも「点数が取りやすい形」になりがちになったりとか、すっかり創造性が割り込む余地がなくなってしまって残念です。SPは今の採点方法で、フリーは6点満点ででもいいのかな?って思うのですがいかがでしょうか?
あとテレビの見せ方として、もう少し個別の採点内容について触れられるといいのですが、時間も限られてる上に解説の方でもすぐにポイントをかいつまんで説明するというのは難しいかな?日本のテレビ局ご自慢のデータ放送をうまく活用するとかなにか得策があるといいのですが、このままではテレビの前の視聴者が置き去りにして、わかりにくい結果も垂れ流しなんてことになってしまいますね。